シラバス情報

科目授業名称(和文) Name of the subject/class (in Japanese)
倫理学入門 (火3)
科目授業名称(英文) Name of the subject/class (in English)
Introduction to Ethics
授業コード Class code
9960147
科目番号 Course number
L2HSHUMb21

教員名
川井 博義
Instructor
KAWAI, Hiroyoshi

開講年度学期
2026年度後期
Year
2026年度
Semester
②Second semester
曜日時限
火曜3限
Class hours
Tuesday/3

開講学科・専攻 Department
創域理工学部(一般教養科目)

A course of liberal arts, the Faculty of Science and Technology
単位数 Course credit
2.00単位
授業の方法 Teaching method
講義

Lecture
外国語のみの科目(使用言語) Course in only foreign languages (languages)
-
授業の主な実施形態 Main class format
① [対面]対面授業/ [On-site] On-site class

概要 Description
人間は善悪正誤の判断を普段「何気なく」しながら生きています。「常識」を基準としてそれを行っています。しかし、それはなぜ「常識」、「当たり前」と言えるのでしょう。そこには何も問題はないのでしょうか。

このような善悪正誤を判断する基準や根拠付けについては、様々な議論の歴史の上に現在のそれが成立しています。

本科目の第1回〜第7回では、倫理学における基礎的な理論とその歴史的展開を学びます。「善い」とはどういうことなのか、「善さ」とは、人の性質なのか、人の行為なのか、人の意志なのか。それは個人の問題なのか、社会の問題なのか。これらの問いには、様々な形で答えが提起されてきました。具体的な考え方を学ぶことで倫理学の基本的な理論とその姿勢を身につけます。

第8回では、前半に学んだ倫理学説を歴史順に並べかえ、人間と動物との関係の議論に焦点を当てながら復習します。最近、「アニマルウェルフェア」という言葉をマスコミなどが取り上げるようになりました。これはピーター・シンガーが1975年に著した『動物の解放』という書籍を嚆矢とする動物倫理学が、多くの人々の意識を変化させた結果です。倫理学は世界の様々な「常識」を問い、新たな「常識」を再構築していきます。

第9回〜第11回では、応用倫理学・現代倫理学という分野の議論を紹介します。具体的には、医療・看護の現場にかかわる生命倫理学の諸議論や、環境倫理学にかかわる世代間倫理の問題を扱います。

第12回〜第14回では、「仕事・職業・労働」をテーマに、西洋と日本との「前近代」から「近代」にかけてこうしたことがどのように問われ続けているかということを学びます。これを通じ、現代を生きる私たちにとって「仕事・職業・労働」とは何かということを考えることができます。

なお、本授業は「教養教育の編成方針」に定める、(1)自然・人間・社会を幅広く俯瞰できる能力、(2)論理的・批判的思考力、(3)コミュニケーション能力、(4)国際性(異文化・異言語・異民族・国際問題の理解力)、を涵養するための科目です。
目的 Objectives
同一の事象であっても、判断基準によって善悪正誤が変化します。古今東西の哲学者・思想家の理論をただ覚えるのではなく、十分に理解した上で、それらを用いながら、みずから様々な事象を多角的にとらえることができるようになることを本授業の目的とします。
到達目標 Outcomes
①授業内に登場した思想家に関する倫理学史上の位置づけを把握し、各学説の正確な理解にもとづき、みずからの表現により、その思想を明晰に説明できる。その際、自身の立場だけではなく、様々な可能性や立場を適切に考慮しながら、議論を展開することができる。

②正誤善悪の基準・根拠について、自身の主張を一面的に展開したり、何かの対象を短絡的に批評するのではなく、自分とは異なる立場に立つなど、いろいろな角度から検討した上で、自身の見解を一定の学術的水準を保ちながら論じることができる。

③現代の様々な倫理的問題(人間をめぐる諸問題、現代の社会的問題など)に関心を抱き、いろいろな立場に立って検討した上で、授業内容の適切な理解に基づき、論理的に自身の見解を示すことができる。

④授業資料をはじめ、各種文献・資料・情報を適切に用い、授業で学んだことを活かしながら、みずから倫理学上の問題について考究することができ、それを伝えるための学術的な論述を深くかつ広く適切な形で展開することができる。

上記①〜④をすべてできるようになることが、本授業の到達目標です。
卒業認定・学位授与の方針との関係(学部科目のみ)
リンク先の [評価項目と科目の対応一覧]から確認できます(学部対象)。
履修登録の際に参照ください。
​You can check this from “Correspondence table between grading items and subjects” by following the link(for departments).
https://www.tus.ac.jp/fd/ict_tusrubric/​​​
履修上の注意 Course notes prerequisites
【授業関連の連絡について】

授業資料の配付や授業関係の連絡はすべてLETUSを通じて行います。LETUSに掲示される情報を常にチェックするようにしましょう。個別の相談は、授業の前後に、直接対面で行うようにしてください。

【第1回授業について】

第1回授業でオリエンテーションを行い、本科目を履修するにあたって必要な伝達事項を説明します。
アクティブ・ラーニング科目 Teaching type(Active Learning)
-
-

準備学習・復習 Preparation and review
毎回、LETUSから授業資料を事前に配布しますので、授業開始までに授業資料を読み、理解できない点を明らかにし、授業内容に対する関心を持つようにしておくことが予習となります(予習:目安40分)。

復習の際は、授業資料を用いなくても、授業内容を説明できる段階になることが目標となります。ノートをつくってA4用紙1枚くらいの分量に授業内容をまとめておくことが、論述の練習になります。また、予習段階で理解できなかったことや、疑問点について、授業で学んだ正確な理解に基づき、まとめておくとよいです。

なお、授業全体における後半になったら、それまでの学習に基づき、みずからの考えを一定の学術的水準で説明できるようにする必要が生じます。

「みずからの考えを説明する」とは、自分が正しいという立場から、様々な物事を論評することや、何かに対する感想を述べることではありません。いろいろな立場に立って、相対的かつ総合的に検討した上、学術的な手続きを踏まえて見解をしめすことです。最終的にそのようなことができるように準備しておくことが復習です。

また、各回の質問や意見などを整理しておき、それらを示すことのできる機会に備えておくことも復習の際に行っておく必要があります(復習:目安90分)。
成績評価方法 Performance grading policy
小レポート課題40%、最終レポート課題60%を大まかな目安にして、総合的に判断して成績評価を行います。その他、授業への貢献度に応じて一定の加点することがあります(評価全体の満点に対する20%が加点の上限)。

授業中・授業後に、質問・意見・感想を表明することができる機会などを何回かつくります。そうした機会に表明する見解や意見などが「授業への貢献度」として評価対象になることがあります(すべてが加点対象になるわけではありません)。

レポートは指定文字数を満たし期限内に提出することが評価対象となるための最低条件です。それができたとしても、論述内容が一定の学術的水準に満たない場合や、授業理解や論述力などが基準に達していない場合、低評価となります。

※条件を満たした小レポート課題・最終レポート課題の両方を提出したのに「-」である場合を除き、成績評価についての問い合わせは受け付けません。レポートを提出しても、すべての授業に出席したとしても、最低限の評価基準に達していない場合は「D」となります。

※追試・再試等は、いかなる理由があっても行いません。

具体的なことは、第1回授業のオリエンテーションで説明します。オリエンテーションで説明した成績評価方法や履修上の注意などについて理解し承諾したことが、履修条件となります。
学修成果の評価 Evaluation of academic achievement
・S:到達目標を十分に達成し、極めて優秀な成果を収めている
・A:到達目標を十分に達成している
・B:到達目標を達成している
・C:到達目標を最低限達成している
・D:到達目標を達成していない
・-:学修成果の評価を判断する要件を欠格している

・S:Achieved outcomes, excellent result
・A:Achieved outcomes, good result
・B:Achieved outcomes
・C:Minimally achieved outcomes
・D:Did not achieve outcomes
・-:Failed to meet even the minimal requirements for evaluation

教科書 Textbooks/Readings
教科書の使用有無(有=Y , 無=N) Textbook used(Y for yes, N for no)
N
書誌情報 Bibliographic information
-
MyKiTSのURL(教科書販売サイト) URL for MyKiTS(textbook sales site)
教科書および一部の参考書は、MyKiTS (教科書販売サイト) から検索・購入可能です。
​https://gomykits.kinokuniya.co.jp/tokyorika/​​​

It is possible to search for and purchase textbooks and certain reference materials at MyKiTS (online textbook store).
​​https://gomykits.kinokuniya.co.jp/tokyorika/

参考書・その他資料 Reference and other materials
毎回、授業資料をLETUSから配布します。事前にダウンロードして読んでから授業に臨みましょう。

【参考書】
小松光彦・樽井正義・谷寿美編『倫理学案内—理論と実践』(慶応義塾大学出版会、2006年)、松田純『安楽死・尊厳死の現在—最終段階の医療と自己決定』(中公新書、2018年)、松原洋子・伊吹友秀『生命倫理のレポート・論文を書く』(東京大学出版会、2018年)、『岩波哲学・思想事典』(岩波書店、1998年)、『哲学事典』(平凡社、1971年)、その他、必要に応じて授業内で紹介します。

※参考書とは、授業内容をより深く・広く学びたい場合、おすすめできる文献です。

授業計画 Class plan
【第1回:オリエンテーション】
・この講義全体にわたるオリエンテーションを行い、授業計画、成績評価方法、注意点等について説明します。

【第2回:義務論】
・文化や国籍などの違いを超えた「人間としての最低限のルール」はあるでしょうか。ドイツのカントはこれを想定することにより、正誤善悪の基準・根拠を論理的に提示しました。「人格」「平和」といった現代の私たちが価値を見出している事柄も、カントの理論がなければ「正しい」「善い」とは言えません。まず、倫理学の基礎的な理論として、カントの義務論を学びます。

【第3回:功利主義】
・「善い」というのは、より多くの人の幸福の量が増加すること、質が高まることではないか。このようなことを考えたベンサムやミルなど功利主義の理論を学びます。具体的な思考実験や事例を通じ、前回学んだ義務論と比較することで、両者を明確化します。

【第4回:徳倫理学】
・古代ギリシャの哲学者、アリストテレスの世界観(目的論的世界観)を理解した上で、彼の提示する人間観を学びます。その中で登場する「徳」についての議論から「善さ」とは何かについて検討します。また、現代において徳倫理を提起する学説も紹介し、その特長と問題点を考えます。

【第5回:道徳性発達理論・ケアの倫理】
・正誤善悪の判断は人それぞれであるが、それは発達段階に区分することが可能であるとするコールバーグの道徳性発達理論をまず学びます。そのコールバーグと影響関係があり、コールバーグを批判的にとらえたキャロル・ギリガンが提唱したケアの倫理について学びます。何が正しいかではなく、どのように応じるかが問題だとするケアの倫理は、ギリガンの後、ノディングズ、トロントらにより継承・深化されます。これらの議論を追うことで、その意義と特色を学びます。

【第6回:市民と社会】
・「権利」とは何でしょうか。どのようなものが権利として正当化でき、どのようなものができないのでしょう。16世紀以降の社会契約説などの思想史的背景を踏まえながら、権利とは何かについて学びます。また、ルソーの社会契約説などを踏まえた現代の倫理学説として、ロールズの正義論を、それに対する批判とあわせて学びます。

【第7回:実存主義・生の哲学】
・19世紀、産業革命を経て、16世紀以降続いてきた近代の行き詰まりが生じます。そこで登場するのが実存主義や生の哲学です。これまでの思想にはどのような問題が提起されたのかを踏まえながら、キルケゴールやニーチェの思想を学びます。

【第8回:人間中心主義・非-人間中心主義、動物倫理、学術的論述とは何か】
・人間と動物との関係に焦点を当てて、ここまで学んだ倫理学説を歴史順に並べかえることで、ここまでの復習をします。人間と動物とは、何が同じで何が違うのでしょうか。ここまで学んだ理性や感覚といったことを基準にすると、どのような人間観・動物観が導出されるのかということを学びます。
・レポート課題に取り組むにあたって、学出的論述とはどういうものなのかについて学びます。

【第9回:生命倫理・医療倫理(1)—積極的・消極的・間接的安楽死—】
・安楽死とは、人や動物に対し苦痛を与えず死に至らしめることであるが、これにはもともと「不可避な苦痛に苛まれていること」といった諸条件があります。なぜそうした条件があるのか、そもそもそうしたことの正誤善悪はどのように考えることができるのか。こうしたことに関する議論を学ぶことで、多角的に安楽死について問います。

【第10回:生命倫理・医療倫理(2)—出生前診断・遺伝子技術—】
・出産前に胎児の特性を検査し、出産の可否を選択することは「善い」ことだろうか。エコー検査などの物理的検査から、遺伝子検査まで、現在は様々な方法で検査することが可能となった。わかったとき、私たちは選択が迫られる。こうしたことにはどのような倫理的問題があるのでしょう。技術の発展により「できること」が増えますが、そこで同時に「やってよいか、わるいか」という問題が生じます。このようなことをめぐる諸議論を学びます。

【第11回:世代間倫理・環境倫理—未来世代に対する配慮は必要か—】
・現代倫理学における重要な分野の一つである世代間倫理の議論を学びます。ギャレット・ハーディンが提起した「救命ボートの倫理」を導入とし、ワグナー、ゴールディング、キャラハンらの議論や、ハンス・ヨナスの「未来倫理」という考え方などを学びます。未来世代へ何ができるか/できないか、何をするべきか/するべきではないか、あるいは、そのようなことを考えること自体が可能か/不可能か、必要か/不必要か、といったことを議論しながら考え、みずからの見解を論じることができるようにすることを目指します。

【第12回:仕事・職業・労働(1)—西洋近現代1】
・産業革命以降、家内制手工業から工場制機械工業への移行に伴い、「働く」ということの在り方、および、その意味が変容しました。19世紀、このことを「疎外」という観点から問題視したドイツのマルクスの労働論と歴史観について触れます。これらを通じて、現代の私たちにとって「働く」とはどういうことなのかを再考します。また、ヘーゲルの唯心論とマルクスの唯物論とを比較しながら、歴史とは何かについても検討します。

【第13回:仕事・職業・労働(2)—西洋近現代2】
・マルクスの労働論に対して、その問題を共有しつつも、批判を加えたハンナ・アーレントの考え方を学びます。アーレントは、古代ギリシアの考え方を踏まえながら「仕事」と「労働」とを明確に区別し、産業革命後の世界における「働く」ことの意味を問い直します。また、20世紀に入り、資本主義という経済の在り方と、キリスト教におけるプロテスタントの考え方との親和性を指摘したマックス・ウェーバーの指摘を学びます。さらに、「消費社会」に対する考察を加えたボードリヤールの思想も検討します。

【第14回:仕事・職業・労働(3)—日本近現代】

・19世紀(明治期)、近代国家(国民国家)を目指す日本の新政府による国権論と、民衆による政治を目指す動きとしての民権論が登場します。それぞれヘーゲルやルソーの国家や政治思想の影響下に、日本へ移入し、社会思想の理念となります。国権論者が提唱した家族国家論が、民衆に「国民意識」を植え付けることになります。その中で「勤勉」が「善いこと」として提起されます。なぜ「善い」ことなのか、その基準や根拠を全体的な人間論・国家論を把握しながら理解します。

【第15回:全体のまとめ】
・全体を通じた質疑応答・意見交換などを行います。

※受講者の状況や興味関心等に応じて授業を進めるので、変更の生じる可能性があります。

担当教員の実務経験とそれを活かした教育内容 Work experience of the instructor
-
教育用ソフトウェア Educational software
-
-

備考 Remarks
※授業資料の配付や各種連絡は、LETUSから行います。履修希望者は、第1回授業開始前までに必ずLETUSから本科目の情報を得られるように準備しておいてください。

※本科目はさまざまなものの見方・考え方を学ぶことで、以上のような根本的な問いを共に考えるための訓練をすることができます。よって、「覚える」ことのみにとどまらず、「考える」ことに対する意欲を持って授業に臨んでください。

授業でのBYOD PCの利用有無 Whether or not students may use BYOD PCs in class
N
授業での仮想PCの利用有無 Whether or not students may use a virtual PC in class
N