シラバス情報

科目授業名称(和文) Name of the subject/class (in Japanese)
化学数学
科目授業名称(英文) Name of the subject/class (in English)
Mathematics for Chemists
授業コード Class code
991345P
科目番号 Course number
13ONMAT201

教員名
中田 真秀
Instructor
Maho Nakata

開講年度学期
2026年度前期
Year
2026年度
Semester
①First semester
曜日時限
木曜5限
Class hours
Thursday 3rd Period

開講学科・専攻 Department
理学部第一部 化学科

Department of Chemistry, Faculty of Science Division Ⅰ
単位数 Course credit
2.00単位
授業の方法 Teaching method
講義

Lecture
外国語のみの科目(使用言語) Course in only foreign languages (languages)
-
授業の主な実施形態 Main class format
① [対面]対面授業/ [On-site] On-site class

概要 Description
化学の学習に必要な数学を概説する。
目的 Objectives

本講義では、物理化学(熱力学・量子化学・分子分光など)およびデータサイエンスに不可欠な数学を、「式変形ができる」段階にとどめず、「化学の問題に適用して解ける」水準まで身につける。具体的には、多変数微分と最適化、線形代数(内積・射影・固有値・最小二乗)、ルジャンドル変換、関数の直交展開を扱い、これらが線形性・射影・双対性といった共通構造によって統一的に理解できることを学ぶ。小規模なモデル問題を通じて、計算手続きの再現性を確保し、得られた結果を安定性・近似・推定の観点から自力で意味づけできるようになることを目指す。

化学における数学は、実用的な道具であると同時に、厳密な論理構築に支えられた概念体系でもある。この二面性により用語や記法に独特の癖があり、慣れが必要となる。しかし数学は抽象的であるがゆえに、化学・実験・物理に現れる多様な現象を同じ枠組みで捉え直すことができる。一見無関係に見える事柄が数学的構造によって結び付くこと、そして「当たり前」に見える式が深い意味を持ち自然現象へ広く接続していることを理解したとき、数学は特定分野の技術を超えた普遍的な思考法として機能する。本講義は、その実感を得るための基礎を与える。

到達目標 Outcomes

化学数学(2年)到達目標

0. 線形代数の復習

  1. ベクトルと行列を線形写像として説明でき、行列積が「写像の合成」であると理解している。

  2. 基底・一次独立・次元の意味を説明でき、与えられた簡単な例で一次独立判定ができる。

  3. 内積・ノルム・直交を計算でき、直交性が「成分が混ざらない」ことを意味すると説明できる。

  4. 直交射影 projvu\mathrm{proj}_v uprojvu を計算でき、最小二乗=射影であることを言葉と式で説明できる。

  5. トレースを定義でき、線形性と巡回性(tr(AB)=tr(BA)を用いて簡単な変形ができる。


1. 多変数微分と最適化(化学で使う手続き)

  1. 多変数関数の勾配・ヘッセ行列を計算でき、臨界点での安定性(極小・極大・鞍点)を判定できる。

  2. ラグランジュ未定乗数法により制約付き最適化を解ける(小規模な計算問題)。

  3. テイラー展開(1変数・多変数の2次まで)を用いて、近似と誤差のオーダーを説明できる。


2. 線形代数(固有値・射影・最小二乗:化学・データのコア)

  1. 対称行列の固有値・固有ベクトルを求め、固有値が「伸び縮みの率」であることを説明できる。

  2. 二次形式 x^T A xと固有値の関係を使って、安定性条件(正定値・半正定値の直観)を説明できる。

  3. 最小二乗問題を「正規方程式の公式暗記」ではなく、射影(幾何)として定式化できる。

  4. 最小二乗を、少なくとも1つの安定な方法(例:直交化の発想=QRの考え方)で解ける/説明できる。
    (※計算は2〜3次元程度で十分。目的は“手続きの理解”)


3. ルジャンドル変換(熱力学を回す道具)

  1. ルジャンドル変換を定義から計算でき、単変数の具体例で変換を実行できる。

  2. 多変数版のルジャンドル変換を用いて、熱力学ポテンシャルの自然変数の持ち替えを手続きとして行える。

  3. 変換後の関係式(微分形)から、必要な関係(例:マクスウェル関係に相当する形)を機械的に導出できる。


4. 関数空間(関数の直交展開)

  1. 関数をベクトルとみなすために、内積・ノルム・直交が何を意味するか説明できる。

  2. 直交展開について、展開係数を内積で求めることができる。

  3. 「直交展開=射影」という統一視点で、近似と結びつけて説明できる。



卒業認定・学位授与の方針との関係(学部科目のみ)
リンク先の [評価項目と科目の対応一覧]から確認できます(学部対象)。
履修登録の際に参照ください。
​You can check this from “Correspondence table between grading items and subjects” by following the link(for departments).
https://www.tus.ac.jp/fd/ict_tusrubric/​​​
履修上の注意 Course notes prerequisites
本講義では、まず定義を正確に理解し、暗記することを最優先とする。定義は以後の議論の拠り所であり、曖昧な理解のまま計算を進めると誤りが連鎖する。
そのうえで、各概念について (1) 定義 → (2) 例 → (3) 反例 → (4) 計算手順 の順に確認し、手を動かしながら数式変形と論理の流れを丁寧に追う訓練を行うこと。
途中式を省略せず、記号の意味(何が既知で、何が未知か)を常に明確にして進めること。また、理解の確認として、同じ結論を別の視点(幾何学的解釈・物理化学的解釈
から説明できるようにすることを推奨する。 
アクティブ・ラーニング科目 Teaching type(Active Learning)
小テストの実施 Quiz type test
-

準備学習・復習 Preparation and review
各回の内容を必ず復習し、計算手順をなぞるだけでなく、定義に立ち返って自分の言葉で説明できることを目標とする。特に、本講義で扱う数学は抽象的な見方を要求するため、初見では理解しにくいことがあるが、反復によって慣れることが重要である。
とりわけ「ベクトル」の概念を、単なる数の並びとしてではなく、同じルール(足し算・スカラー倍)が成り立つ対象として捉え直してほしい。具体的には、関数・多項式・行列などもベクトルとして扱うことができ、内積・直交・射影といった考え方が共通に適用できる。復習では、計算問題に加えて、対象を「ベクトルとして見なす」ために必要な条件や、その見方の利点を整理すること。
成績評価方法 Performance grading policy
期末試験100%で評価する。
学修成果の評価 Evaluation of academic achievement
・S:到達目標を十分に達成し、極めて優秀な成果を収めている
・A:到達目標を十分に達成している
・B:到達目標を達成している
・C:到達目標を最低限達成している
・D:到達目標を達成していない
・-:学修成果の評価を判断する要件を欠格している

・S:Achieved outcomes, excellent result
・A:Achieved outcomes, good result
・B:Achieved outcomes
・C:Minimally achieved outcomes
・D:Did not achieve outcomes
・-:Failed to meet even the minimal requirements for evaluation

教科書 Textbooks/Readings
教科書の使用有無(有=Y , 無=N) Textbook used(Y for yes, N for no)
Y
書誌情報 Bibliographic information
-
MyKiTSのURL(教科書販売サイト) URL for MyKiTS(textbook sales site)
教科書および一部の参考書は、MyKiTS (教科書販売サイト) から検索・購入可能です。
​https://gomykits.kinokuniya.co.jp/tokyorika/​​​

It is possible to search for and purchase textbooks and certain reference materials at MyKiTS (online textbook store).
​​https://gomykits.kinokuniya.co.jp/tokyorika/

参考書・その他資料 Reference and other materials

化学への数学  https://www.tkd-pbl.com/book/b10109980.html 
化学における数学的な作法や処理に困っている方に向けた,化学数学の入門書.


授業計画 Class plan

1. ガイダンス(短)+線形代数(抽象)①:ベクトル空間・部分空間・基底

2. 線形代数(抽象)②:線形写像・行列表現・基底変換(基底依存性)

3. 内積空間:直交・直交補空間・直交分解(+双対の直観を最小限)

4. 射影定理:最小二乗を直交条件から導出(正規方程式の意味づけ)

5. 関数空間:関数もベクトル(内積=積分、近似=射影)

6. 直交展開:フーリエ級数(係数は内積で決まる、射影としての理解)

7. 最小二乗(計算編):Ax≃bAx\simeq bAx≃b、QRの考え方、安定性の直観

8. 中間テスト(+解説):第1〜7回(定義・導出・小規模計算・説明)

9. 微積①:微分=線形写像(全微分・勾配、意味中心)

10. 微積②:2次近似・ヘッセ行列・ラグランジュ未定乗数法

11. 固有値①:対称行列・二次形式・正定値の直観

12. 固有値②:ヘッセ安定性/データ(PCA入口:なぜ固有値か)

13. 群論(対称性)+不変量(最小限):C₂v の要素列挙・Cayley表/相似変換でのトレース不変

14. ルジャンドル変換(統合回):定義→多変数→熱力学ポテンシャル(微分形の導出)

15. 総合演習・まとめ:射影/固有値/双対(ルジャンドル)を一本化して回収


担当教員の実務経験とそれを活かした教育内容 Work experience of the instructor
理化学研究所などで20年程度、理論分子科学および最適化、線形代数、計算科学に関する研究を行ってきた。
これらの経験と知識を講義に活かす。
教育用ソフトウェア Educational software
-
-

備考 Remarks

授業でのBYOD PCの利用有無 Whether or not students may use BYOD PCs in class
N
授業での仮想PCの利用有無 Whether or not students may use a virtual PC in class
N