シラバス情報

科目授業名称(和文) Name of the subject/class (in Japanese)
現代思想 (後・木5)
科目授業名称(英文) Name of the subject/class (in English)
Contemporary Philosophy
授業コード Class code
99K1603
科目番号 Course number
L1HSHUMc21

教員名
戸田 聡一郎
Instructor
Soichiro Toda

開講年度学期
2026年度後期
Year
2026年度
Semester
②Second semester
曜日時限
木曜5限
Class hours
Friday 5th period

開講学科・専攻 Department
理学部第一部 経営学部(一般教養科目)

Faculty of Science Division Ⅰ

A course of liberal arts, the School of Management
単位数 Course credit
2.00単位
授業の方法 Teaching method
講義

Lecture
外国語のみの科目(使用言語) Course in only foreign languages (languages)
-
授業の主な実施形態 Main class format
① [対面]対面授業/ [On-site] On-site class

概要 Description
本講義は、「私たちは何かを本当に知りうるのか」という懐疑論の問いを出発点とし、そこから現代の科学哲学および現代思想の主要な論点までを一本の糸で貫いて概観するものである。
まず、デカルト『省察』における方法的懐疑を検討する。彼は感覚の欺き、夢、そして欺く神という段階的な懐疑を経て、知識の確実な基盤を探求した。この古典的懐疑論に対し、二十世紀の哲学は二つの方向から応答する。バリー・ストラウドは、懐疑論を単純に論駁できるとする楽観を退け、それが哲学的問いとして持続する意義を論じる。他方ウィトゲンシュタインは『確実性について』において、疑いという行為そのものが疑いえない「蝶番」命題の枠組みを前提とすることを示し、懐疑を実践の内部から限界づけた。
しかし、この懐疑論は科学の場面で構造を変えて再燃する。それが本講義の中心的な掴みとなるデュエム=クワインの決定不全性テーゼである。すなわち、いかなる観察証拠も理論を一意に決定しない。ある実験が予測と食い違ったとき、棄却すべきが仮説なのか、補助仮説なのか、測定装置の前提なのかは、論理だけでは決まらない。ここから科学哲学の主要な立場が分岐していく。ポパーの反証主義はこの困難への一つの応答であり、クーンのパラダイム論はこれを科学史のうちに位置づけ直し、通約不可能性という帰結を導いた。ラカトシュとファイヤアーベントの議論は、その先鋭化された形として検討される。
決定不全性が示すのは、科学的知が証拠のみによっては確定せず、共同体の規約や制度、権力の作用によって支えられているという事態である。この認識は、フランス科学認識論(バシュラール、カンギレム)を経由して、現代思想へと接続される。フーコーのエピステーメーと権力/知の分析、デリダの脱構築、ドゥルーズ=ガタリの思考、そしてラトゥールのアクターネットワーク理論は、いずれも「知はいかにして構築されるか」という問いへの応答として読むことができる。
 講義の終盤では、この問題系が現代の具体的な場面でいかに作動しているかを検討する。特に、意識障害(植物状態/無反応性覚醒症候群)の患者をめぐる議論を取り上げる。神経科学的エビデンスの蓄積にもかかわらず、「意識があるか否か」という判定は一意に確定しない。ここでは決定不全性が、単なる認識論的問題ではなく、生と死の境界をめぐる法的・倫理的決定の問題として立ち現れる。アガンベンの「剥き出しの生」「閾」概念と、それに対する批判的検討を通じて、科学・法・思想が交錯する現場を具体的に考察する。最終回では、ポスト真理時代における知の条件をめぐって受講者による討論を行う。
 理工系の学生にとって、自らが従事する科学的実践が、いかなる前提のうえに、いかなる歴史的・社会的過程を経て成立しているのかを問い直す機会となることを期待する。
目的 Objectives
科学的知識が証拠のみによって一意に確定するわけではないこと——決定不全性——を、懐疑論から科学哲学、現代思想へと至る系譜のうちに理解する。そのうえで、自らが従事する科学的実践が、いかなる前提と歴史的・社会的過程のもとに成立しているかを批判的に問い直す視座を獲得する。さらに、生と死の境界をめぐる現代的問題を通じて、科学・法・倫理が交錯する場面で思考する力を養う。
到達目標 Outcomes
1)デカルト、ウィトゲンシュタインらの懐疑論の論点を説明できる。
2)デュエム=クワインの決定不全性テーゼを理解し、ポパー、クーンらの応答の相違を説明できる。
3)フーコー、ラトゥールらの現代思想を、知の構築性をめぐる問いとして位置づけられる。
4)以上の枠組みを用いて、意識障害や人工知能など現代の具体的問題を自ら分析し、論述できる。
卒業認定・学位授与の方針との関係(学部科目のみ)
リンク先の [評価項目と科目の対応一覧]から確認できます(学部対象)。
履修登録の際に参照ください。
​You can check this from “Correspondence table between grading items and subjects” by following the link(for departments).
https://www.tus.ac.jp/fd/ict_tusrubric/​​​
履修上の注意 Course notes prerequisites
履修人数によって討論の方法を変えることにします。
アクティブ・ラーニング科目 Teaching type(Active Learning)
課題に対する作文 Essay/ディベート・ディスカッション Debate/Discussion/グループワーク Group work/プレゼンテーション Presentation

準備学習・復習 Preparation and review
各々の授業の後に、簡単な小レポートを課す。
成績評価方法 Performance grading policy
筆記試験50%、ディベート等の参加・小レポートの内容
学修成果の評価 Evaluation of academic achievement
・S:到達目標を十分に達成し、極めて優秀な成果を収めている
・A:到達目標を十分に達成している
・B:到達目標を達成している
・C:到達目標を最低限達成している
・D:到達目標を達成していない
・-:学修成果の評価を判断する要件を欠格している

・S:Achieved outcomes, excellent result
・A:Achieved outcomes, good result
・B:Achieved outcomes
・C:Minimally achieved outcomes
・D:Did not achieve outcomes
・-:Failed to meet even the minimal requirements for evaluation

教科書 Textbooks/Readings
教科書の使用有無(有=Y , 無=N) Textbook used(Y for yes, N for no)
N
書誌情報 Bibliographic information
-
MyKiTSのURL(教科書販売サイト) URL for MyKiTS(textbook sales site)
教科書および一部の参考書は、MyKiTS (教科書販売サイト) から検索・購入可能です。
​https://gomykits.kinokuniya.co.jp/tokyorika/​​​

It is possible to search for and purchase textbooks and certain reference materials at MyKiTS (online textbook store).
​​https://gomykits.kinokuniya.co.jp/tokyorika/

参考書・その他資料 Reference and other materials
アレックス・ローゼンバーグ『科学哲学 なぜ科学が哲学の問題になるのか(シリーズ現代哲学への招待Basics)』東克明、森元良太、渡部鉄兵(訳)、春秋社(2011)

授業計画 Class plan
第1回 導入——なぜ理工系学生が哲学を学ぶのか
本講義の全体構成と問題設定を提示する。科学的知識の確実性という素朴な前提を問いに付し、懐疑論から決定不全性テーゼへと至る本講義の主軸を概観する。評価方法および文献の扱いについても説明する。

第2回 デカルトの方法的懐疑
『省察』第一省察を読む。感覚の欺き、夢の懐疑、欺く神という三段階の懐疑の構造を検討し、なぜ懐疑が「方法」でありうるのかを考察する。

第3回 コギトと確実性の基盤
第二省察を読む。コギト・エルゴ・スムが懐疑の帰結として持つ意味、およびそこから外界の存在をいかに導くかという課題(デカルト的循環)を検討する。心身二元論の成立とその後の問題も概観する。

第4回 ストラウド——懐疑論はなぜ重要か
バリー・ストラウド『哲学的懐疑論の意義』を手がかりに、懐疑論を安易に論駁しようとする試み(超越論的論証を含む)がなぜ失敗するのか、そして懐疑論が哲学的に持続する意義を検討する。

第5回 ウィトゲンシュタイン——蝶番命題と実践の枠組み
『確実性について』を読む。疑いという行為そのものが疑いえない命題の枠組みを前提とするという議論を検討し、懐疑論への実践論的応答の可能性と限界を考察する。

第6回 決定不全性テーゼ——本講義の中心的論点
デュエムの全体論的テーゼとクワイン「経験主義のふたつのドグマ」を検討する。観察証拠が理論を一意に決定しないとはいかなる事態か、その論理構造を確認し、以後の全回を貫く問題設定として定式化する。

第7回 ポパーの反証主義
反証可能性を科学の境界設定基準とするポパーの立場を検討する。これが決定不全性への一つの応答であることを確認し、同時にデュエム=クワイン問題によっていかなる困難に直面するかを議論する。

第8回 クーンのパラダイム論
『科学革命の構造』を読む。通常科学、パラダイム、科学革命、通約不可能性の各概念を検討し、決定不全性が科学史のうちに位置づけられたときに何が帰結するかを考察する。
第9回 ラカトシュとファイヤアーベント、そしてフランス科学認識論
研究プログラムの方法論、および「何でもあり」の方法論的アナーキズムを検討する。あわせてバシュラールの認識論的障害、カンギレムの正常/病理の議論を紹介し、フランス系の科学認識論がフーコーへと接続する道筋を示す。

第10回 フーコー——エピステーメーと権力/知
『言葉と物』および『知の考古学』の枠組みを検討する。知の可能性の条件としてのエピステーメー概念を、クーンのパラダイム論と対比しながら考察し、権力と知の相互構成という主題を導入する。

第11回 デリダとドゥルーズ=ガタリ——知の脱構築
デリダの差延と脱構築、ドゥルーズ=ガタリのリゾーム概念を検討する。二項対立的な思考枠組みそのものの解体という戦略が、科学的知の理解にとって何を意味するかを議論する。

第12回 ラトゥール——科学的事実はいかに作られるか
『科学が作られているとき』を手がかりに、アクターネットワーク理論の枠組みを検討する。実験室における事実の構築過程を追跡することで、決定不全性が実践のうちでいかに解消(あるいは隠蔽)されるかを考察する。

第13回 生政治と生命科学——フーコーとアガンベン
フーコーの生権力論とアガンベンの「剥き出しの生」「ホモ・サケル」「閾」概念を検討する。生と死、正常と異常の境界がいかに政治的に生産されるかという問題を導入し、次回の具体的検討への準備とする。

第14回 意識の境界——意識障害をめぐる科学・法・思想
植物状態/無反応性覚醒症候群(VS/UWS)をめぐる神経科学的知見(オーウェンらのfMRI研究等)と、英国意思決定能力法(MCA2005)の枠組みを検討する。「意識があるか否か」の判定が証拠によって一意に確定しないという事態を、決定不全性の現代的な現れとして分析し、アガンベンの「動く境界」論への批判的検討を行う。

第15回 総括と討論——ポスト真理時代における知の条件
アルゴリズムによる知の生産、人工知能をめぐる認識論的問題を素材に、本講義で扱った枠組みの現代的意義を検討する。受講者による討論を行い、全体を総括する。

第14回で扱う論文(アガンベン批判の議論)は事前配布のうえ、討論の材料とする構成を想定しています。シラバス様式に落とし込む段階で、各回の予習指示や課題も加えられます。

担当教員の実務経験とそれを活かした教育内容 Work experience of the instructor
-
教育用ソフトウェア Educational software
-
-

備考 Remarks

授業でのBYOD PCの利用有無 Whether or not students may use BYOD PCs in class
N
授業での仮想PCの利用有無 Whether or not students may use a virtual PC in class
N