本講義では，土木工学と公害・環境問題の歴史的経緯を概観し，今日的な環境課題や国際条約，法令に基づく対策，環境マネジメントの考え方を学ぶ．その中で，土木技術が健全な自然環境や人々の健康と不可分であることを理解し，技術者倫理に基づく持続可能な社会づくりへの貢献を探る．

土木工学の観点から公害や環境問題に取り組む上で必要となる歴史的背景，国内外の制度や国際的枠組み，環境マネジメント技術の基礎事項について学ぶ．土木技術者が社会的責任と倫理観をもって環境保全・公衆衛生に寄与するための基礎的知識を習得する．

1）公害・環境問題の歴史や法・制度・国際条約を説明できる．

2）土木と公衆衛生の関係や各種環境影響評価の仕組みを説明できる．

3）SDGsやカーボンニュートラル，生物多様性保全の意義を説明できる．

4）技術者倫理の規定や実践例を踏まえ，自らの責任と役割を考察できる．

※土木工学科が定める学習・教育目標との関連

上記到達目標は，次の学習・教育目標に基づいている．

（B)土木工学の主要専門分野（構造，材料，地盤，水理，環境，情報，計画）の基礎知識を習得するとともに，応用できるようになる．

（D)土木技術が自然・社会に及ぼす影響・効果を理解し，その社会的役割と責任を認識し，技術者倫理に基づいて判断できるようになる．

準備学習：土木工学，環境工学に関連する時事の情報収集を行うこと．

復習：各回の講義内容，小テストを十分に復習すること．

各講義における小テスト（12回）24％（12回×2点）

レポート6%

授業内試験（中間）　35%

授業内試験（期末）　35%

上記の素点を合計して成績評定を行うものとし，点数の調整は実施しない．

単位認定には「倫理に関する設問群」と「それ以外の設問群」でそれぞれ基準値（各配点の60%）を上回る必要がある．

1．ガイダンス，公害・環境問題の全体像：本講義の目的や進め方，評価基準等について説明．伝染病と上下水道整備．土木工学における環境配慮の重要性．歴史的経緯の大枠（敗戦直後〜高度経済成長〜公害国会〜環境庁設立〜地球環境問題）の概説

2．戦後日本の復興と公害：戦後復興，経済成長と公害の深刻化（四大公害），産業構造の変化と都市化，法令整備の遅れに起因する企業対応の遅れ．公害先進国．

3．公害対策の進展：公害国会で制定された公害関連法案の数々とそれに基づく対策．公害対策先進国．

4．環境保全への転換と国際的動向：「公害対策」から「環境保全」へ．環境庁設立とストックホルム国連人間環境会議．環境保全先進国．ハーバーボッシュ法と富栄養化．

5．地球規模の環境問題と国際枠組み：地球規模での環境問題の台頭（オゾン層破壊，酸性雨，温暖化），国際条約・会議（モントリオール議定書，リオ地球サミット，京都議定書，パリ協定），SD・SDGs，国連気候変動枠組条約（UNFCCC），IPCCによる気候変動レポート

6．環境マネジメントシステム（ISO14000シリーズ）：ISO14000シリーズ誕生の背景と目的．ISO14001（EMS）の基本構造（環境方針，著しい環境側面，PDCAサイクル），土木分野・建設現場での運用事例や課題，認証取得におけるメリットと限界

7．中間テスト（第1回〜第6回）

8．土木プロジェクトの環境影響評価：環境影響評価の意義とプロセス（スコーピング，予測・評価，住民参加，モニタリング），戦略的環境アセスメント，住民合意形成・パブリックコメント

9．循環型社会・廃棄物・資源管理：廃棄物問題とリサイクル（一般廃棄物，産業廃棄物，最終処分場問題），循環型社会形成推進基本法，循環経済（サーキュラーエコノミー），建築副産物の再利用

10．SDGsと今日的課題−生物多様性・プラスチック問題：SDGsの全体像，生物多様性基本法，愛知ターゲット，ネイチャーポジティブ，30by30，プラスチック汚染問題

11．SDGsと今日的課題−気候変動・カーボンニュートラル：気候変動，カーボンニュートラル，再生可能エネルギー導入，排出量取引，カーボンプライシング，緩和と適応，ESG投資・ESG経営

12．環境リスクと災害リスク：気候変動に伴う水循環の変化，豪雨・台風・海面上昇による水害リスク増大，気候変動を見込んだ河川整備計画の修正

13．土木技術者の技術者倫理：全ての土木技術者は「技術者倫理」を身に付け，環境に配慮する必要がある．土木学会・日本技術士会における「技術者倫理」の考え方．将来の土木技術者が果たすべき役割と社会的責任

14．期末テスト（第8回〜第13回）

15．レポート課題