シラバス情報

科目授業名称(和文) Name of the subject/class (in Japanese)
熱力学
科目授業名称(英文) Name of the subject/class (in English)
Thermodynamics
授業コード Class code
9962301
科目番号 Course number
62PHTSM101

教員名
田村 雅史
Instructor
Masafumi Tamura

開講年度学期
2023年度前期
Year/Semester
2023 First Semester
曜日時限
月曜2限
Class hours
Monday 2nd Period

開講学科・専攻 Department
創域理工学部 先端物理学科

Department of Physics and Astronomy, Faculty of Science and Technology
単位数 Course credit
2.0単位
授業の方法 Teaching method
講義

Lecture
外国語のみの科目(使用言語) Course in only foreign languages (languages)
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授業の主な実施形態 Main class format
対面授業/On-site class

概要 Description
すべての巨視的物質系が従う熱力学は,起きうる変化と最終的に到達する状態を,たった2つの基本法則で規定している。単なる,気体の物理量変化の計算手段ではなく,現実世界の物理現象を予測・考察するための基礎として,温度,エネルギー,エントロピーなど巨視的物理量を用いて,詳細によらずに可能なことと不可能なことを区別する判断基準となっている。このことを学んで理解する。
目的 Objectives
1. 熱や温度の物理的意味を理解し,エネルギー計算に適用できるようになる。
2. 熱と仕事の出入り(収支)を把握して,第1法則に当てはめることができるようになる。
3. 不可逆性とエントロピーの関係(第2法則)を理解する(S-Tグラフの適用)。
4. 自由エネルギーなど熱力学関数の性質を用いて,第1法則と第2法則を組み合わせ,平衡条件を示すことができるようになる。
5. 物質の状態変化の原因を,化学ポテンシャルに基づいて考えることができるようになる。

以上は,ディプロマ・ポリシーの
「1. 物理学は素粒子・原子から環境・宇宙までのあらゆるスケールの現象に法則性を見出すことで成り立っていることを踏まえ、自由に物事を見渡して本質を見通すことができる。
2. 物理法則の確実な理解(基礎学力)と体系的な専門知識を有し、それを応用できる。」
に該当する。
到達目標 Outcomes
前半はエントロピーが,後半は自由エネルギーと化学ポテンシャルが,それぞれキーコンセプトであり,全体を通して偏微分を駆使できるようになることが大切である。その上で,
1 熱や温度の物理的意味を説明できるようになる。
2 数学面では,複数の変数で状態を規定していくのが熱力学の方法の特徴であり,与えられた条件に合わせて適切な固定変数を選び,全微分・偏微分を使いこなせるようになるのが目標の1つである。
3 熱力学第2法則を学んで,ありえない変化とありうる変化の区別がつけられるようにする。
4 熱力学第2法則を通して,エネルギー変換とその効率について考えられるようになる。
5 熱力学関数を学んで,物質の安定性や加熱・加圧による状態変化の原因を考えられるようになる。
卒業認定・学位授与の方針との関係(学部科目のみ)
基礎物理学に関する問題解決能力 / 熱・統計物理学・物性物理学に関する問題解決能力
履修上の注意 Course notes prerequisites
次に学ぶ統計力学入門につながる基本的な内容を含むとともに,電磁気学と組み合わさって物性物理学関係の選択科目につながっていく。
アクティブ・ラーニング科目 Teaching type(Active Learning)
課題に対する作文 Essay/小テストの実施 Quiz type test
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準備学習・復習 Preparation and review
準備学習としては,高校物理で扱った熱学(P-V図上で理想気体の仕事の出入りの計算など)と,1年次の力学の授業で扱った保存力とポテンシャルの内容を確認しておくこと。電磁気学に現れる分極や磁化のエネルギーも見直しておくこと。1年次の化学の内容も,熱力学の理解につながるものがかなり含まれているので,復習することを奨める。
予習は,授業1回につき1時間程度を目安に資料や次回予告に目を通し,用語の定義などを確認すること。
授業の単元は概ね3回で区切れるので,区切りごとに集中して,例題を解く,数式の導出やグラフを自ら再現する,などの復習をする必要がある。目安として,授業3回に対して3〜5時間程度を要する。
成績評価方法 Performance grading policy
到達度評価の評価点を主とし,中間試験やレポート課題による評価点(〜40 %)を加味する。
【COVID-19の感染状況によっては,予告の上で変更されることがある。】
学修成果の評価 Evaluation of academic achievement
・S:到達目標を十分に達成し、極めて優秀な成果を収めている
・A:到達目標を十分に達成している
・B:到達目標を達成している
・C:到達目標を最低限達成している
・D:到達目標を達成していない
・-:学修成果の評価を判断する要件を欠格している

・S:Achieved outcomes, excellent result
・A:Achieved outcomes, good result
・B:Achieved outcomes
・C:Minimally achieved outcomes
・D:Did not achieve outcomes
・-:Failed to meet even the minimal requirements for evaluation

教科書 Textbooks/Readings
教科書の使用有無(有=Y , 無=N) Textbook used(Y for yes, N for no)
N
書誌情報 Bibliographic information
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MyKiTSのURL(教科書販売サイト) URL for MyKiTS(textbook sales site)
教科書および一部の参考書は、MyKiTS (教科書販売サイト) から検索・購入可能です。
It is possible to search for and purchase textbooks and certain reference materials at MyKiTS (online textbook store).
https://gomykits.kinokuniya.co.jp/tokyorika/​​​

参考書・その他資料 Reference and other materials
1. 佐々真一「熱力学入門」(共立出版)(コンパクトで廉価でもあるが,信頼できる丁寧な記述)
2. 清水明「熱力学の基礎」(東京大学出版会)(良書。ただし準備が丁寧な分,温度がなかなか出てこないので,先を急ぐ人にはつらいかも),
3. 「高橋秀俊の物理学講義——物理学汎論 」(ちくま学芸文庫)(文庫本で読めるが,物理学全般にわたる稀有な教科書で,第3〜9,12,31章などこの授業との関連も深い。)
4. 田崎晴明「熱力学—現代的な視点から」(培風館)(正確・完全・厳密な理解を目指すなら)
5. A. カチャルスキー他「生物物理学における非平衡の熱力学」(みすず書房)の第1〜5章(平衡・可逆系の熱力学を整理されて学べる。第6章以下の「不可逆性」「流れ」「動き」まで進めば,平衡系の理解が深まる),
6. I. プリゴジンら著「現代熱力学—熱機関から散逸構造へ」(朝倉書店)(やや分量が多く,発展的なことまで学び続けるのによい),
7. E. フェルミ「フェルミ熱力学」 (三省堂)(簡潔すぎて背景を読みとれないうちはかえって難しいかもしれない),
8. 久保亮五編「大学演習 熱学・統計力学」(裳華房)の第1〜4章(この本の真価は第5章以下の統計力学の部分にあるが)

授業計画 Class plan
以下の内容を扱う。
番号は必ずしも講義回数とは限らない(講義を進める順番と量の目安)。

1 温度とは,熱とは  熱力学系(孤立系,閉鎖系,開放系)の状態を表す熱力学変数
              (示量性変数,示強性変数)
2 熱力学第0法則    つりあい(平衡)
3 全微分形式と偏微分 (内部)エネルギー変化,熱の出入り,仕事のやりとりの計算
4 熱力学第1法則(1)   熱の出入りを伴う場合のエネルギー保存則
             熱の意味の再確認,熱容量(比熱),エントロピー変数の導入
5 熱力学第1法則(2)  例:気体の内部エネルギー,等積・等圧・等温過程
6 熱力学第1法則(3)  S-Tグラフ,可逆断熱変化,状態方程式の役割(1),不可逆断熱変化
7 熱力学第2法則(1)  不可逆性の存在,クラウジウスの原理
8 熱力学第2法則(2)  断熱系のエントロピー増大,エントロピーとは何か
             (統計力学・情報論への手引き,熱力学第3法則)
9 熱力学第2法則(3)  熱サイクル(熱機関・ヒートポンプ)の効率
             熱力学関数導入の動機,P-V図からS-T図へ
10 熱力学関数(1)    熱の出入りがある系の平衡条件,ルジャンドル変数変換
11 熱力学関数(2)    ヘルムホルツ自由エネルギー,エンタルピー,ギブズエネルギー
12 熱力学関数(3)    マクスウェルの関係式,状態方程式の役割(2)
13 物質の状態変化(1)  化学ポテンシャル(物質量あたりのギブズエネルギー),
             一次相転移と状態図,クラペイロン-クラウジウス式
14 物質の状態変化(3)  秩序化とエントロピー,比熱
  非平衡系への入門   ジュール熱を発生する系の線形法則
15 到達度評価     試験と講評

授業担当者の実務経験 Work experience of the instructor of the class
理化学研究所(2000-2008)等で,有機磁性体等の物性研究に熱力学を適用してきた経験も反映させて授業を行う。
教育用ソフトウェア Educational software
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備考 Remarks