シラバス情報

科目授業名称(和文) Name of the subject/class (in Japanese)
教養フォーラム(文化と思想)
科目授業名称(英文) Name of the subject/class (in English)
Liberal Arts Forum for Freshmen(Culture and Thought)
授業コード Class code
9960K05
科目番号 Course number

教員名
松浦 真澄、昼間 賢、村上 学
Instructor
Murakami, Manabu
Matsuura, Masumi
Hiruma, Ken

開講年度学期
2023年度前期
Year/Semester
2023/first semester
曜日時限
土曜2限
Class hours
Monday, 5

開講学科・専攻 Department
創域理工学部(一般教養科目)

A course of liberal arts, the Faculty of Science and Technology
単位数 Course credit
2.0単位
授業の方法 Teaching method
講義

Lecture
外国語のみの科目(使用言語) Course in only foreign languages (languages)
-
授業の主な実施形態 Main class format
オンライン授業(非同期)/Online (asynchronized remote)
ただし、対面またはオンライン授業(同期)/Online (synchronized remote)の回がある。

概要 Description
本授業の目的と目標は別途記載の通りとする。
 本授業の具体的テーマは「心を考える・知る・語る」とし、哲学、心理学、文学の3人の専門家によるオムニバスとする。

【哲学】
 まず、哲学からはじめよう。「心」はどの時代にあっても大きな謎の一つであり、そしてその捉え方は時代によって違っていた。それはたとえば「魂」から「精神」、あるいは「心」へ、そして「脳」へと、人間の、そして世界の眺め方の変化と連動している。では、現在、「心」にかかわる哲学的問題はどうなっているのだろうか。果たしてAIは「心」となりうるのだろうか。あるいは、心理学と哲学の重なりと断絶。心の「科学的解明」とその限界、文学や歴史などの人文学は心の解明にどのような寄与をするのだろうか。「心」の謎を一緒に考えていきたい。

【心理学】
 心理学の立場からは、「心」を科学の対象とすることについて、特に「心の問題」の理解や支援の在り方について考える。まずは心理学の全体像や、基本的な考え方を学ぶ。次に、臨床心理学について概観し、その標準的な考え方を学習する。そして、臨床心理学の異なる立場について知り、「心」の「問題」を科学や支援の対象とすることの特殊性や可能性について考察していくことになる。

【文学】
 そして最後に、言葉によった「心」の表現として、文学の基本ジャンルである詩について、事例とともに学ぶ。「心」が問題になるとき、対人的には、その問題を言葉にすることができないということだろう。そこで、問題解決のための説明とは異なった性質の表現、すなわち詩がありうる。言えないこと、言わないことを言葉にすること。それは、目に見えない「心」の様態にかたちを与え、見えるようにすることでもある。またこの機会に、詩にかんする基礎知識を習い、芸術の基本としての詩を見い出してみよう。

 本授業を通して、教養を学ぶ面白さの一つに「自他の心を知る」ことがあること。そしてその「心」へのアプローチ/切り口は決して一つではないこと。心を知るためには、様々な関連分野を行き来しながら考えていかなければいけないことを体感できるだろう。ここからさらに次の教養の学びへと進んでほしい。

担当教員
村上(哲学・倫理学)
松浦(臨床心理学)
昼間(フランス文学・芸術)

---
 なお、本授業は、くさび型教養教育におけるカテゴリーA(オムニバス)の授業である。分野は主に人文社会に分類されるが、この分類は暫定的なものでしかなく、自然科学の知見も扱う総合的な授業である。
 他の生き物と、あるいは機械(ロボット)と区別され、「人が人である」その第一の印は「心がある(を持つ)」であろう。人間を知るとは「心を知る」ことであると言っても過言ではない。様々な分野を紹介しながら、人の心に関わる問題圏を論じることで、教養の学びへの入門としてほしい。
目的 Objectives
本学の教養教育の理念に基づき「教養と科学と技術を一体と捉え、複雑化・多様化する社会で活躍できる人材の育成に寄与することを目指す」。
 そのための教育システム「東京理科大学型くさび型教養教育」の出発点(カテゴリーA)に本授業は位置している。それは教養教育の到達点(目標地点)を様々な分野で見せる「オムニバス科目」または、各分野の広さや面白さ、意義等を学生に気づかせる「ガイダンス的科目」として展開されるが、本授業では後者を基本とする。
 本授業によって、次のカテゴリーB及びC、Dでの履修選択を「自由に」かつ主体的に行えるように受講者に様々な知識、情報、示唆を与え、教養そのものの面白さを表現することを目指す。
到達目標 Outcomes
本授業の目的は、上記目標に向けて次のようになる。
・教養科目・分野の幅広さとそれらの有機的つながりを俯瞰的に理解できる。
・テーマについて哲学、心理学、文学3つの各分野の現在の到達点について一定の理解を持つ。
・テーマについて哲学、心理学、文学3つの各分野の謎(問題)がどのようなものかを理解し説明することができる。
・教養科目について自由に選択するための情報を持ち、実際に主体的に選ぶことができる。
卒業認定・学位授与の方針との関係(学部科目のみ)
MA:基礎学力(諸分野の知識)/基礎学力(横断的俯瞰能力)/研究者倫理 PH:一般教養の習得とコミュニケーション能力および理科教育に関する能力 IS:教養 BS:一般教養学力 AR:基礎教養能力 CA:論理構成力・横断的思考力・課題発見力/教養・倫理観・コミュニケーション力 EE:コミュニケーション能力 IE:教養学力 ME:一般教養・基礎学力/問題解決能力 CV:多面的な素養
履修上の注意 Course notes prerequisites
本授業は、各教員、各回によって、対面、遠隔同期、遠隔非同期の各方法を採用する。
履修者はLETUS上の当該コースを参照し、各回の履修方法を確認すること。
アクティブ・ラーニング科目 Teaching type(Active Learning)
課題に対する作文 Essay/小テストの実施 Quiz type test/ディベート・ディスカッション Debate/Discussion
-

準備学習・復習 Preparation and review
各回に授業準備・復習については別にこれを指示する。
詳細はLETUSコース上の該当回を参照すること。
成績評価方法 Performance grading policy
各回で実施される小テスト(または小レポート)と到達度評価(または期末レポート)によって評価する。

具体的点数配分は授業中(第1回)で説明する。
小テスト、レポートの詳細はLETUSコース上に掲載する。
学修成果の評価 Evaluation of academic achievement
・S:到達目標を十分に達成し、極めて優秀な成果を収めている
・A:到達目標を十分に達成している
・B:到達目標を達成している
・C:到達目標を最低限達成している
・D:到達目標を達成していない
・-:学修成果の評価を判断する要件を欠格している

・S:Achieved outcomes, excellent result
・A:Achieved outcomes, good result
・B:Achieved outcomes
・C:Minimally achieved outcomes
・D:Did not achieve outcomes
・-:Failed to meet even the minimal requirements for evaluation

教科書 Textbooks/Readings
教科書の使用有無(有=Y , 無=N) Textbook used(Y for yes, N for no)
N
書誌情報 Bibliographic information
-
MyKiTSのURL(教科書販売サイト) URL for MyKiTS(textbook sales site)
教科書および一部の参考書は、MyKiTS (教科書販売サイト) から検索・購入可能です。
It is possible to search for and purchase textbooks and certain reference materials at MyKiTS (online textbook store).
https://gomykits.kinokuniya.co.jp/tokyorika/​​​

参考書・その他資料 Reference and other materials
必要な場合は授業内で配布または指示する。

授業計画 Class plan
第1回:ガイダンス *遠隔非同期で実施します  LETUSのコースを参照ください
本授業の担当者を紹介し、授業内容、進行方法、評価方法などを説明する。
また、本学の教養科目のうち、特に人文学、社会科学の科目についても紹介して、今後の履修の参考となる情報の提供を行う。

第2回:(哲学1) 遠隔非同期予定(以下第13回まで、各回の実施方式はLETUS参照)
「心」をめぐる現代の問題を概観する。
心とは結局「脳」の活動なのか、AIは心を「再現」できるのか、我々の「心」が病気になるとはどのようなことか。「言葉によって」心が癒されたり、傷ついたりする、というのはどういうことか。などなど。
「自分・私」の中「心」にある「何か」が現代でも謎であることを確認しよう。

第3回:(哲学2)「心」ははじめから「心」だったわけではない
 「心とは何か」自体が現在、AIとの関連で問題である点から出発し、「心」の概念史と呼べるような説明を展開する。「魂(プシュケー)」、「霊(アニマ)」から「精神」「心」「脳」へと至る「心の捉え方」を概観して、心自体が謎であることを理解する。

第4回:(哲学3)「心的言語」:心があるから成立する「言語」
 我々が「心」と呼ばれる特別な何かを「持つ」かどうかについては見解が分かれる。心が実は「脳の物理的機能の表現」である(「心が脳に還元できる」=心脳一元論)なら、心の働きの全てが物理法則で表現できるはずである。ところが、近年、「心は特殊な存在者である」という考えが復権してきた。その証拠として挙げられるのが「言葉」や「概念」の使用である。もしそうなら、コンピューターが「心」を持つ場合、どのようでなければならないのだろうか。概要だけだが、みんなで考えてみたい。

第5回:(哲学4)「心の謎」としての感情
 「心の哲学」における感情論の現在を確認し、「道徳的感情」など、「感情」の特異性や現代的問題領域を確認し、心を哲学的に考察するサンプルとして提供する。
ここまで「心」を考えるときにどんな問題があるのか概観してきた。「心の謎」の話の続きはカテゴリーC『哲学の現在』で用意される。


第6回:(心理学1) 心理学と臨床心理学
 多岐にわたる心理学の主な分野について紹介し、全容を概観する。そして目に見えないはずの「心」をどのように研究の対象にしてきたのか、代用的な方法を説明する。その後、臨床心理学の歴史や代表的な理論について概観する。

第7回:(心理学2) 心の問題をどのように支援するか:スタンダードな支援
 うつ病を例に挙げ、心の問題の診断、検査、治療・支援について、標準的かつ代表的な理論や方法(心理療法など)を概説する。その後、当たり前のようにおこなわれやすい「問題の原因を探すこと」「問題が人の中にあると考えること」による弊害や問題について検討をおこなう。

第8回:(心理学3) 心の問題をどのように支援するか:非・スタンダードな支援
 かつて「魔術師」と称された天才的療法家の実践エピソードを読み、「問題の原因を探すこと」「問題が人の中にあると考えること」等をおこなわない支援について考察する。

第9回:(心理学4) 心の問題をどのように支援するか:新しい流れ
 問題の捉え方や支援の在り方について反省をした実践家たちが、どのような心理療法を編み出してきたか。心理療法の新しい流れについて、その変遷を概観する。


第10回:(文学1)心と言葉。見えないからこそ、言葉によった心の表現としての詩。
 詩は、私のものであり私だけのものではない「心」を表す。心は目に見えない。現代の詩は「イメージ」が重要である。

第11回:(文学2)詩の歴史。詩が「心の表現」になったのは、わりと最近のことである。
 文学ジャンルとしての詩の基礎知識。叙事詩と抒情詩。定型詩と自由詩。うたう言葉と書く言葉。近代以前は「メディア」だった詩、芸術の核心。

第12回:(文学3)様々な詩句、様々な心。切羽詰まった言葉たち。
 障がい者の詩、死刑囚の句、第二の人生を生きる手段、単純な言葉、等々。鑑賞中心に。

第13回:(文学4)美しい心、汚い心。理想としての詩、はけ口としての詩
 芸術=「美」(ばかり)ではない。人に言えない苦しみ、自分だけではないかという恥ずかしさが、詩の(芸術の)原動力になる。


第14回:まとめ  (対面予定)
 授業担当教員3名がシンポジウム形式で本授業全体を振り返る。

第15回:到達度確認
 受講者の到達度を確認する。
 方法については授業内で指示する。

授業担当者の実務経験 Work experience of the instructor of the class
-
教育用ソフトウェア Educational software
-
-

備考 Remarks
本授業は2022年度以降はくさび型教養教育「カテゴリーA」科目として実施されるものである。