シラバス情報

科目授業名称(和文) Name of the subject/class (in Japanese)
物性論2B
科目授業名称(英文) Name of the subject/class (in English)
Solid State Physics 2B
授業コード Class code
9912214
科目番号 Course number
12PHCMP304

教員名
満田 節生
Instructor
Setsuo Mitsuda

開講年度学期
2023年度後期
Year/Semester
2023 Second Semester
曜日時限
木曜3限
Class hours
Thursday 3rd Period

開講学科・専攻 Department
理学部第一部 物理学科

Department of Physics, Faculty of Science Division Ⅰ
単位数 Course credit
1.0単位
授業の方法 Teaching method
講義

Lecture
外国語のみの科目(使用言語) Course in only foreign languages (languages)
-
授業の主な実施形態 Main class format
対面授業/On-site class

概要 Description
電子物性のうち物質の磁性について修得する。
目的 Objectives
磁性は一言で言えば、磁場に対する磁気モーメントの応答を知ることであり、多くの講義すべき項目を含んでいる。しかしながら磁性分野の内容を広く概観することは避け、むしろ量子力学および統計力学で学ぶ事項を具体的に適用する舞台として位置づけ、物質の磁性を語る上でこれらのコア科目の学習内容がどのように活用されるかを理解することを目的とする。
到達目標 Outcomes
具体的には3年生対象の物性論2Bでは、磁気モーメントの集合体に対する統計理論を通して、揺らぎと感受率、秩序変数と相転移などの項目を強磁性体・反強磁性体・フェリ磁性体において理解できるようになることを到達目標としたい。
なお磁気モーメントの電子論を通して、量子力学で学習する角運動量、摂動論、多電子系の項目を実際に適用することでこれらの理解を深めることは物性論2Bに引き続き開講される物性論3Bで学ぶ。本授業は物理学科のディプロマ・ポリシー項目2に定める「物理学の十分な基礎学力と高度な専門知識」を 身に付けるための科目である。 また、物理学科ルーブリックの評価軸2の「専門学力」の項目 に該当する科目である。
卒業認定・学位授与の方針との関係(学部科目のみ)
専門学力(現代物理学)/問題発見、解決能力
履修上の注意 Course notes prerequisites
3年生前期までに講義される量子力学および統計力学に関する内容を理解しておくこと。特に、統計力学で学習する内容は必須であり、「カノニカルアンサンブル」による熱力学量の計算方法について既知であることが前提となる。
学科Webサイトにある物性論群俯瞰図を見て、物性論群における物性論2Bの位置づけを把握すること)

アクティブ・ラーニング科目 Teaching type(Active Learning)
課題に対する作文 Essay/反転授業 Flipped classroom
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準備学習・復習 Preparation and review
扱う単元によっては、概念的な理解を深める前の段階で必要になる機械的な計算等については、簡易的な反転授業形態における事前学習として動画クリップの視聴を求める場合がある。また対面授業の最後に、講義した内容の理解を深めるための問題あるいは次回の講義の理解の導入になるような問題を「次回までのレポート」として適当な頻度で課すので、これらを授業の事前・事後の準備学習・復習として取り組んでほしい。なお、この「次回までのレポート」についてはできるだけ次回の講義の冒頭で解説する。
成績評価方法 Performance grading policy
成績評価は
(i) 講義内容の理解を促進させるために適時課す「(簡単な復習の計算を求める)次回までのレポート」、
(ii) 講義内容の区切りごとに「授業ではどんな話をしたか」を読んでわかるようにLETUSにフィードバックする、
(iii) 8回目の授業で行う「到達度評価」の結果
によりおこなう。
学修成果の評価 Evaluation of academic achievement
・S:到達目標を十分に達成し、極めて優秀な成果を収めている
・A:到達目標を十分に達成している
・B:到達目標を達成している
・C:到達目標を最低限達成している
・D:到達目標を達成していない
・-:学修成果の評価を判断する要件を欠格している

・S:Achieved outcomes, excellent result
・A:Achieved outcomes, good result
・B:Achieved outcomes
・C:Minimally achieved outcomes
・D:Did not achieve outcomes
・-:Failed to meet even the minimal requirements for evaluation

教科書 Textbooks/Readings
教科書の使用有無(有=Y , 無=N) Textbook used(Y for yes, N for no)
N
書誌情報 Bibliographic information
(今年度は物性論2Bでは参考書にとどめるが)2024年度からは物性論群の共通テキストとして「●初歩から学ぶ固体物理 学 (KS物理専門書) 矢口 裕之 (著)」を用いることが予定されている。物質の磁気的性質を扱う「物性論2B・物性論3B」では、このテキストの「13章固体の磁気的性質」で述べられている事項についてはすべて話をするが、さらに補うべきより進んだ事項についても、参考書にあげているテキスト等を参照して、丁寧に話をする。
MyKiTSのURL(教科書販売サイト) URL for MyKiTS(textbook sales site)
教科書および一部の参考書は、MyKiTS (教科書販売サイト) から検索・購入可能です。
It is possible to search for and purchase textbooks and certain reference materials at MyKiTS (online textbook store).
https://gomykits.kinokuniya.co.jp/tokyorika/​​​

参考書・その他資料 Reference and other materials
2024年度からは物性論群の共通テキストとして用いることが予定されている「●初歩から学ぶ固体物理学 (KS物理専門書) 矢口 裕之 (著)」は平易であり丁寧に説明されており、物性論の入門テキストとしてバランスの良い特徴があるが、より学習を深めるためには、古くからの物性論全般を扱うスタンダードなテキストとして
●キッテル: 固体物理入門(上) (丸善)(原著Kittel: Introduction to Solid State Physics, John Wiley,Inc.) 
●イバッハ:固体物理学(シュプリンガー)
●アシュクロフト/マーミン:固体物理学(吉岡書店) を
を勧める。さらに磁気物性に特化したテキストとして
●固体の磁性(始めて学ぶ磁性物理)(原著 Stephen Blundell:Magnetism in Condensed Matter)
をあげておく。
 

授業計画 Class plan
0回目 導入(ビデオ講義)
「磁性体の分類と電磁気学における磁性体(巨視的)から物性論における磁性体(微視的)へ」を導入部分としてを学び、物性論2B・3Bで学習する内容の全体像がわかるようになる。

1回目 磁気モーメントの統計論
既に統計力学1における例題として扱っている、大きさが固定された磁気モーメントが熱擾乱を受けて揺らぎ、外磁場によりその揺らぎが抑えられる場合の磁性体の熱力学(内部エネルギー・比熱・磁化・帯磁率の温度・磁場依存性)を復習し、Langevin関数・Brillouin関数の導出における連続準位・離散準位の熱力学への反映の違いを理解できるようになる。

2回目   1次元イジング磁性体モデル(ゆらぎと応答)(その1)
(磁気モーメント間に相互作用があっても)学部3年生に無理なく厳密な計算が可能な1次元イジング磁性体モデルの熱力学を理解できるようになる。

3回目   1次元イジング磁性体モデル(ゆらぎと応答)(その2)
1次元イジング磁性体モデルの例題を用いて、外力が働かない時の系のゆらぎを知ることで、(弱い)外力を加えた際の系の応答がわかることを理解できるようになる。

4回目 強磁性体の平均場近似(その1)
一般には厳密解を求めることが困難な多体問題を1体問題に帰着させる平均場近似の方法論を、強磁性体を例題にして、理解できるようになる。

5回目 強磁性体の平均場近似(その2)
厳密解との比較による平均場近似の限界と有効性を理解することができるようになる。また、強磁性における(常磁性ー強磁性)相転移現象の理解を熱力学で学んだそれを超えて深めることができるようになる。

6回目 反強磁性体の平均場近似
4回目で学んだ平均場近似の方法を反強磁性体に適用し、その熱力学的性質が理解できるようになる。物理的例題としてイオン結晶MnOの磁性をとりあげ、反強磁性を初めて実験的に検証した中性子散乱実験にもふれる。

7回目 フェリ磁性体の平均場近似
4回目で学んだ平均場近似の方法をフェリ磁性体に適用し、その熱力学的性質が理解できるようになる。物理的例題としてフェライト をとりあげる。

8回目 まとめと到達度判定の確認

予備内容 強磁性体におけるスピン波
強磁性体の基底状態近傍の励起状態であるスピン波を古典運動方程式により導出し、(格子波を量子化しフォノンとしたように)スピン波を量子化したマグノンが説明する強磁性体における磁化・比熱の温度変化を(個別励起と集団励起の違いも含めて)理解できるようになる。またより量子力学的なマグノンの導出についても補足をするので、スピンからボソンへのマッピングの例に触れることができる。



授業担当者の実務経験 Work experience of the instructor of the class



教育用ソフトウェア Educational software
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Mathematicaにより授業者が作成したコンテンツをWOLFRAM-PLAYERにより再生して活用する

備考 Remarks
BYOD(Bring Your Own Device)の方針に沿って準備される学生自身のデバイス上で、Mathematicaコンテンツを再生するWOLFRAM-PLAYERを動かすことにより、「動くグラフ」を活用してアクティブラーニング型授業を適時行なう。